「東日本被災地の廃棄物資源管理戦略 」 環境総合研究所 池田こみち
http://www.eforum.jp/japa2011/WasteManagementStrategyfortheAffectedAreas.pdf
(要所抜粋)
….瓦礫には、コンクリート片、建設廃材(木材等の建材)、プラスチック類、金属類、生ごみ(魚類、水産加工物等)、油類など多様なごみが含まれ、その多くは分別が困難なほど汚泥や海水で汚れている。そのため扱いが著しく困難である。環境省の調査によると、その大まかな内訳は、可燃ごみ(柱、壁、家具)23%、不燃ごみ(コンクリート等)66%、不燃ごみ(金属くず)2%、不燃ごみ(家電等)4%と報告されている。
……..瓦礫量は全国の一般廃棄物年間排出量の1/2以上に相当する。海や川に流出した瓦礫、船、車、汚泥を加えるとその量は増加する。一方、質的側面で見ると、津波によって保管されていた各種農薬類、PCB含有製品類、重油・石油、ガソリンなどの燃料類、油類などが流出し、汚泥まみれ状態となっている。また海水に洗われ塩分を高濃度に含んでいる。倒壊した建物にはアスベストなどの有害物質が含まれる可能性も高い。こうした多種多様な汚染物質が付着し渾然一体となった災害廃棄物を通常の廃棄物と同様に処理処分することには極めて問題が多い。
環境省は学識経験者による安全評価検討会資料として瓦礫の放射能や仮置き場から1m離れた地点の空間線量率を測定している。だが膨大な瓦礫すべての放射性物質や汚染物質を測定するのは困難である。図-2及び図-3は、環境省が測定を行ったデータの一部である。同調査から放射能レベルを見ると木質系廃棄物では1,200Bq/kg、瓦では3,300Bq/kg、コンクリート系廃棄物についても1,500Bq/kgが検出されている。そればかりでなく、実際に、津波で押し寄せた汚泥には海底に溜まっていた高濃度の砒素が検出されているという(東北大学大学院調査)。
[3.1 焼却大国日本の実態]
……現行法下では、廃棄物焼却施設に対する排ガス規制項目はばいじん、硫黄酸化物、窒素酸化物、塩化水素、ダイオキシン類の5項目に過ぎず、EUでは早くから規制されている重金属類の規制すら行われていない。ましてや瓦礫に多く含まれると思われるPAH類(多環芳香族炭化水素類)や放射性物質などの監視や規制の制度はない。かかる法制度の欠陥を見ると、膨大な量の瓦礫を通常の一般廃棄物に混ぜ焼却し、残渣の灰を埋立処分する方法には合理性がない。
[3.3 妥当性と意思決定の正当性の検証]
……環境省は、2011年5月15日に「災害廃棄物安全評価検討会」として環境法や環境科学、医学、原子力工学などの研究者7名からなる検討会を設置、9月末までに7回の会合を開催した。その上で環境省が提案する放射性廃棄物の焼却処理と処分に「お墨付き」を与え、方針として発表した。だが、この検討会は非公開で議事録すら公表しないきわめて閉鎖的なものであり、最も重要視される政策立案の意思決定の透明性がまったく確保されていない。
…….それぞれの方針が技術的、科学的に安全なものであるかどうか、その妥当性について第三者的な検証・実証を経ていない点で大きな禍根を残している。いずれにせよ、議事録すら公表されていないことから、焼却炉や処分場周辺住民を納得させるだけの議論が行われたのかも定かではない。ここで言えることは、安易に焼却すれば間違いなく高濃度に放射性物質が濃縮された焼却灰や飛灰が全国に拡散することである。
たとえば、釜石市など3市2町(釜石市、大船渡市、陸前高田市、大槌町、住田町)で構成される岩手沿岸南部広域環境組合は、2010年末に公設民営方式で建設した新しい清掃工場において、新日鐵を中心とする受注事業者との間で建設費と今後15年の維持管理を含め194億円もの契約を済ませており、周辺5市町の災害廃棄物を広域処理施設で焼却処理することを決定したが、果たして同地域の膨大な瓦礫の処理をガス化溶融炉に委ねてよいのか疑問である.
…….本稿では、上記を踏まえ、津波対策を考慮した瓦礫処理として大胆な廃棄物資源戦略を提案したい。すなわち、この重要課題について、瓦礫処理と関連させ、海岸側に20~30mの防波堤(防潮堤)を構築する政策提言である。この政策提言は、欧州諸外国における実例をもとに、日本の廃棄物処理法、沿岸法など現行法とも齟齬がない形で構築が可能であり、費用対効果にも優れた方法であると考えている。それは沿岸域の陸側最先端部分に、コンクリート構造物で管理型処分場に類する堰堤、防波堤型の処分場をつくることである。………….
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